購買プロセスの変化
マーケティングを勉強された方であれば、「AIDMA(アイドマ)」という言葉をご存知だと思います。AIDMA(アイドマ)とは、アメリカ合衆国のサミュエル・ローランド・ホールが自身の販売・広告の実務書で示した広告宣伝に対する消費者の心理のプロセスを示した略語[1]です。具体的には、「Attention(注意)」→「Interest(関心)」→「Desire(欲求)」→「Memory(記憶)」→「Action(行動)」の流れになります。
しかし、この概念が生まれたのは1920年代。現在はインターネットが普及し、消費者の購買行動は大きく変化しています。AIDMAを反映させたモデルが、アンヴィコミュニケーションズの提唱する、「AISCEAS(アイセアス)」[1]です。2005年、広告マーケティングの専門誌『宣伝会議』に掲載されたものですが、現在の消費者の購買プロセスをより鮮明に表しています。具体的には、「Attention(注意)」→「Interest(関心)」→「Search(検索)」→「Compare(比較)」→「Examination(検討)」→「Action(行動)」→「Share(共有)」の流れになります。
このモデルの目的は、感情段階で接触するメディアの変化を認識することにあります。今までは、企業側がテレビや紙媒体のメディアに広告を流し、それを見た消費者が「欲求」→「記憶」となりました。ですが、AISCEASでは、この部分に「検索」→「比較」→「検討」という消費者側からのアプローチが入ることで、購買行動が複雑になっているのです。
また、もともとAISCEASの理論で購買行動をとるのは、あくまでも「機能価値の高い商品やサービスだけ」でした。店頭で購買を決めるような日用品にこのモデルは適用できないとされていたのです。しかし、現在では日用品もネットで購入する人が増えています。この「店頭→ネット」という購買の売り場の変化は、AISCEASの理論で購買をする消費者が増えることを意味します。今後もますます、あらゆる商品の購買が「店頭→ネット」になることは容易に想像できるため、今は店頭販売がメインの業界でも、ネット販売での購買対策を考えた方がいいかもしれません。
では、このAISCEASをどのように解釈し、自社の販促に生かしていけばよいのでしょうか。とりわけ重要な、「検索」→「比較」→「検討」のプロセスから、以下のような解釈と指針が得られます。
「Search(検索)」
消費者がどのようなキーワードで検索するか。
「Compare(比較)」
消費者の購買の判断基準は何か。
「Examination(検討)」
行動につなげるには何が必要か。
ある意味、分かりきった指針です。しかし、情報量がこの十数年で数百倍、数千倍になりました。良い商品・サービスは世の中にあふれています。その中で消費者に選ばれるためには、消費者に価値を伝える熱意だけでなく、堅実に仕組みを構築していくことも大事なのです。
ライター:表 悠司
[1]参考資料Wikipediaより
[2]参考URL→ http://www.amviy.jp/index.html