前回に引き続き、マイナンバー制度について書いていきます。
デメリットは何か?
今回は、企業や投資家に焦点を当てて考えてみます。まず、企業にとってのマイナンバー制度のデメリットは事務作業が増加することです。2016年度からの運用に伴い、企業は従業員のマイナンバーをすべて把握し、社会保険関係の届出書や税務署等への提出書類に記載しなければなりません。そのような書類の作成を税理士事務所に委託している企業も少なくないのですが、基本的には企業側が従業員から本人確認を経て、マイナンバーを収集する作業は行われると考えられます。浅い理解やずさんな管理をすると、法律に抵触する場合があるので注意が必要です。従って、企業においてはマイナンバーを正しく管理するための知識と体制を準備するコストがかかります。
一方、個人投資家のような立場の人々からすると、マイナンバー制度はどう映るのでしょうか。ネットやニュースなどで、「マイナンバー制度によって所得や資産がすべて把握されてしまう」といった懸念が広がっています。
「そういうことを言う人は、脱税をしている人だ」と考える人もいますが、他の意見もあります。例えば、今後は給与所得だけでなく金融所得や金融資産も把握され富裕層へ課税する流れは、課税コスト以上の資産運用を行うことが難しくなり、日本で経済活動をする人が減少するといったものです(「出国税」によって課税逃れのための海外移住者のハードルは上がりましたが…)。
少子高齢化社会で人口が減少している日本において、税収の仕組みは国力に大きな影響を与えます。図らずも、日本で投資をして日本で稼ぎたいという必然性は薄れていくのかもしれません。
よくある誤解
セキュリティの面で、「マイナンバーを知られてしまうと個人情報が芋づる式に漏洩する」という誤解があります。これは、マイナンバー制度が個人情報を一元管理するものだという誤った認識からきています。従来、個人情報は「縦割り行政」で各役所(情報保有機関)がそれぞれ管理していました。例えば、ある役所で住所変更の届け出を提出しても他の役所にある自分の情報には反映されません。
これが、利用者や行政側に様々な問題をもたらしてきました。
しかし、マイナンバー制度によってこの問題は改善されると考えられています。仕組みとしては、各役所(情報保有機関)にある個人情報がマイナンバーによって紐付けられることで、情報提供ネットワークを介して必要なときに個人情報を突合できるというものです。「マイナンバーを基に特定の機関に共通のデータベースを構築すること」はしません。よって一元管理という言葉は不適切です。今までとおり、分散管理という体制であり、必要な情報を「取り出したいときに取り出せる」準備をするための仕組みだと言えます。
「内閣府マイナンバーホームページ」http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/
ライター:表 悠司