要約
・価値とは利益/負担の分数である。
・価値を向上させるには、顧客が受け取る利益を大きく顧客が被る負担を小さく。
〈価値の等式〉
「ビジネスは価値と価値のやり取りだ」なんて、よく聞きます。では、価値とは何でしょうか?改めて考えてみると、意外と説明が難しいのではないでしょうか。今回は、マーケティングの大家であるフィリップ・コトラーの価値に関する、とても分かりやすい考え方を紹介します。
彼が書いた『A FRAMEWORK FOR MARKETING MANAGEMENT』という論文の第1章「Defining Marketing for the 21st Century」のなかに、「価値とは何か?」という話があるのですが、彼は価値をある等式にして表しています。
価値を分数で表すのは、とても新鮮に見えます。ちなみに、利益と負担はすべて顧客が受け取る(被る)ものになります。それでは具体的に1つずつ見ていきましょう。
〈分子:利益〉
まず機能的利益について、これは例えば製品の音質・画質・洗浄力・保温性などその製品の持つ機能のことを指しており、基本的に技術革新によって向上されることが多いです。これを向上させることは、大きな差別化につながります。次に感情的利益について、これはブランドを思い起こすとイメージしやすいです。例えばルイヴィトンのカバンのように、利便性でいうと他のカバンの方が優れているかもしれませんが、「持っている」ということが自信や誇りになる、といったことを指しています。基本的に機能的利益の向上には多くの資金や資源が必要になります。そのため、それらに乏しい企業は感情的利益の向上に努めます。昨今、地方の特産品をブランド化していく流れが多い理由の1つです。これも上手くいけば、強力な優位性になります。
〈分母:負担〉

はじめに金銭的負担。これはそのままの意味です。ただ、決して安くなければならないわけでありません。高いから売れるものもあります。価格は安易にいじらない方が良いです。次に時間的負担について、例えば、ネット販売はこの費用を大きく低下させる方法です。わざわざ店舗に行かなくても自宅で買い物できるということは、時間の節約になりますよね。次に労力的負担について、これは肉体的な負担のことを指しており、例えば重い商品の販売であっても「発送承ります!」ということであればこの負担は軽減されるわけです。最後に心理的負担について、例えばユニクロはこれをうまく軽減させていると言えます。ユニクロの衣服はどれもシンプルでスタイリッシュ、他の服とも合わせやすいですよね。言い換えれば無難なわけです。服選びにはセンスが問われる、という心理的負担の受け皿になったことも、ユニクロの成功要因の1つでしょう。分母を考える時に重要なのは、「大きすぎる負担を作らないこと」です。いくら機能が素晴らしいパソコンでも、起動に1時間かかるようでは売るのは難しいです。つまり、ボトルネックがある意味その製品・サービスの価値を決定付けるのです。分母を見るときは、まず一番負担になっているところを探しましょう。
以上見てきましたが、いかがでしたか?まとめると、
・価値とは利益/負担の分数である。
・分子の向上は、優位性の確保に直結する。資金や資源がなくても上手く向上させる企業は存在する。
・分母の軽減は、まず顧客にとって一番負担になっているところを見つけることが大事。
「自社の製品・サービスの価値をより向上させるためには何が出来るだろうか…」と考えるときにとても役に立つので、是非皆さんのビジネスに置き換えて考えてみてはいかがでしょうか?
ライター:表 悠司